このごろ
みんながみんな
なにもかも知ってる
と思ってる
て感じてる
ネットは便利だし
指1本で情報の洪水のなかを泳いでるとき
なにもかもにすぐ飽きてしまうのは
しかたのないこと
もう義務のひとつになってるんだから
(ま……そんなもんだよねって)
このごろ
情報はいつでもどこでも手に入るから
ホントのことなんて探す気にはならない
なにをすべきか言われるほうが
うんと楽だし
(ま……そんなもんだよねって)
このごろ
ホントのことにはうんざりしてる
やわらかい微笑をうかべたウソのほうに
甘く抱きしめてくれるウソのほうに
身も心もゆだねたい
ウソは
もう夢と希望の化身みたいになってるから
でも、こんなこと
みんな知ってる
とっくに知ってる
そう思ってる
そう感じてる
(ま……そんなもんだよねって)
わたしたちは
すこし不安げな微笑をうかべた
やさしい
おとなしい
電脳奴隷なのだから
でも、どうしようもない
そうも思ってる
それも知ってる
それは感じてる
(ま……そんなもんだよねって)
わからないのは
いったいいつごろから
こうなってしまったのか
それがわからない
理性の眠りは怪物を生む……
あれはたしかフランシスコ・デ・ゴヤだった?
わたしたちが眠ってる間に
だれかが
わたしたちみんなの歴史を
こっそりと
ごっそり盗んでしまったみたいな
そんな気がする
このごろ
まわりのみんなに従うことは
とても大切だと思ってる
そう感じてる
そう信じてる
(ま……そんなもんだよねって)
このごろ
みんながしてることと
同じことをするのは
ひっそりと自分を消してしまいたいから
そう思ったりもする
そう感じることもある
そう思ってる自分を知ってることが
とても気に入ってると感じることがある
いつも比較的マジメな顔をして
スマホをじっと見つめてる
そんな自分がいることを知ってる
そんな自分を感じてる
そんなわたしのことを
なにもかも知っているだれかが
きっとどこかにいるはずだから
この気持ちをわかってくれるだれかが
どこかにいるはずなのだから
そう思うことがある
そう感じることがある
だからじっとスマホの画面を見つめて
そんな人からのメッセージが届くのを
ひっそりと待ってる
そんなフリをしてる
そんなフリをしてる自分を感じることもある
(ま……そんなもんだよねって)
うんと昔の人たちは
リアルの世界でそんな人たちと出会ったり
リアルの世界でそんな人たちと会話を交わしたり
リアルの世界でそんな人と手をつないだり
そんなことをしていたのかもしれない
そんなふうに思いたい自分がいて
そんなふうに感じたい自分がいて
起きているときも
心がなんども寝返りを打つ
心がなんども寝返りを打つたびに
目を大きく開いたまま悪夢を見ていることに気がついてしまう
そんな自分を知ってる
そんな自分を感じてる
(ま……そんなもんだよねって)
昔の人たちは
リアルの世界での出会いを大切にしていた
そんなふうに思ってる
ほんとうは知らないけど
そんなふうに思ってる
そんなふうに感じてる
でもそれはもう
はるか遠い昔の思い出でしかない
それを知ってる
知ってると思ってる
思ってると感じてる
わたしたちは
すこし不安げな微笑をうかべた
やさしい
おとなしい
電脳奴隷なのだから
わたしたちが
大きく目を見開いたまま
ひっそりと眠ってる間に
だれかがこっそりと
わたしたちの歴史を盗んでしまった
そうにちがいない
そんな感じがする
(ま……そんなもんだよねって)
理性の眠りは怪物を生む……
あれはたしかフランシスコ・デ・ゴヤだった?
聞こえてくるのは
甘くやさしいウソのささやきばかり
だから目を大きくひらいて
こっそりと眠りにつく
(ま……そんなもんだよねって)
だからって
負けたわけじゃない
敗北したわけじゃない
たとえ悪夢を見たとしても
それも夢であることには変わりがないんだから
それも夢のひとつなんだから
それだけはわかってる
そのことは知ってる
そのことを知ってるって感じてる
そう感じてるって信じてる
そう信じてるって思いこんでる
理由はわからないけど
わたしたちが眠ってる間に
だれかが
なにかを
盗んだのにちがいない
災いが起こるたびに
だれかが
いつも
こっそりと
わたしたちの歴史を盗んでしまう
そのことに気づいてる
そのことに気づいてることを知ってる
そのことを知ってると思ってる
そう思ってるって感じてる
そう感じてるって信じてる
理由はわからないけど
(ま……そんなもんだよねって)
だからって
わたしたちは負けたわけじゃない
敗北したわけじゃない
パンドラの箱と同じ
たくさんの悪徳と不幸と絶望があふれ出てきたら
希望だって外に出たくなる
そう思ってる
そう信じてる
そう感じてる
(ま……そんなもんだよねって)
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