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  • 執筆者の写真香月葉子

アンダーヘアの剃毛、除毛、脱毛の歴史とネットポルノ

更新日:3 日前


ヘアがあるだけでこんな目にあわされるの?


 ある母親から「自分の息子が自殺願望を抱いているらしいからなんとかしてください」と相談された米国の女性セラピストが書いた記事をご紹介します。


 彼女はファミリーセラピーの専門家です。


 ある有名な私立の男子校(private boys’ school)に入学したあと、14歳の息子さんからみるみる明るさが消えて、親と話さなくなり、ひとりきり部屋に閉じこもることが多くなったらしいのです。


 その少年となんどかセッションを重ねるうちに、この女性セラピストは、彼が学校でイジメにあっているという事実をつかみます。


 すべては、少年がロッカールームで着替えをしていたときに始まったらしいのです。


 まわりにいた男の子たちが少年の下半身を指さしながら大笑いしたことが発端(ほったん)でした。


 ほかの少年たちは、全員、アンダーヘア、つまり股間部のヘア(pubic hair)を処理していて、下半身はツルツルの状態だったのですけれど、少年にはまだそこにヘアがあったからです。


 それを見られてからというもの、彼は、みんなから『毛むくじゃら』(The Hairy Dude)と呼ばれるようになってしまったのです。


 ソーシャルメディアにおいても、おなじように小馬鹿にされて笑い者にされたために、登校拒否におちいり、この世界から消え去りたいと願うようになったということです。


 いまの米国では、とくに白人で中産階級の家庭に育った10代(13歳から19歳までのティーンズ)の男の子は、ワキとスネのヘアを除毛しているだけではなくて、股間部のヘアも除毛処理しているのがあたりまえで、アンダーヘア(pubic hair)があるというのはネアンデルタール人(原始人)あつかいされるらしいのです。


 しかも、ほとんどの親は、自分の子供にそんなことが起こっているなんて夢にも思わないという別世界に生きています。


 なにかが大きく変わってしまったのです、とセラピストは書いています。


 とくに、スマートフォンがこの世に誕生してからというもの、その変化のスピードはますます増しています、と。


 子供たちはあらゆることをすべてスマホを通して学ぶようになり、親や先生をふくめたオトナへの信頼と尊敬はますます右肩下がりに薄らいでゆくばかりで、このままでは、子供たちが異性との接し方やセックスのやりかたを学ぶのは、ほとんどがポルノサイトからだけになり、事態はどんどん悪い方向へと向かっているとしかおもえません、と述べていました。


スマホとポルノと除毛トレンドの関係って?


 ところで、10代(teens)の女の子たちのあいだでは、すでに2005年あたりから、ハリウッドのポルノ女優さんたちのように股間部をツルツルに除毛処理することがあたりまえになっていたようです。


 わざわざ毛穴のなかの毛根までをも除去する「医療脱毛」(medical epilation メディカル・エピレーション)を誕生日プレゼントとして親にねだる子供たちまでもが出てきたのもこの当時からだそうです。


 股間部(プライベート・パーツ private parts)のヘアが嫌われるようになり、反対に恥丘(ヴィーナスの丘 mons pubis)の盛りあがりと、そこにきざまれた少女のような一本の縦スジに美しさを見いだすようになってきたからなのでしょう。





 米国の心理学専門誌に掲載された記事に目を通してみますと、2000年あたりから、ハリウッドポルノの影響もあって、西洋文化圏のなかの、とくに白人女性たちのあいだで、股間部のヘアは嫌悪感をあたえるものだという考えがひろまりはじめたらしく、剃毛(shaving シェービング)から除毛(removal リムーヴァル)へと変化していき、それがいつのまにか毛根までをも除去する脱毛(epilation エピレーション)の流行にまで発展してきた、と書かれてありました。


 そういえば、1990年代には、股間部にきっちりと食いこむようなスラックスやショーツや水着を身につけることで、女の子が自分の恥丘とその縦スジのシルエットをひとびとの目にさらすことが流行していたのをおぼえています。


 エンボス加工のように浮きあがらせたその股間部のシルエットが、ちょうどラクダのつま先に似ているためキャメル・トー(camel toe)と呼ばれていました。


 考えてみると、キャメル・トー(くっきりワレメちゃん)の流行そのものが、その後にくる除毛処理をほどこしたツルツルの股間部を予見していたのかもしれません。


 また、ちょうどそのころから、北米や欧州諸国のヌーディスト(裸体主義者)の男性たちのあいだでも、股間部のヘアを完全に除毛することがトレンドになりはじめたということです。


除毛の歴史を調べてみたら…?


 それはそれとして、女の子が股間部のヘアをととのえる(トリムする・刈る)という行為は、1946年にビキニが誕生したころからはじまっていますし、1980年代からはブラジリアン・ビキニ・ワックスによる除毛法がトレンドになりました。


 このビキニという水着は、第2次世界大戦後にはじめて原爆実験がおこなわれたビキニ環礁から発想を得た名称だそうで、さまざま批判を受けたことでいっそう知れわたったそうですから、いまでいう炎上商法を成功させた過去の例のひとつなのかもしれませんね。


 ところで、このような除毛の習慣は、古くは古代ギリシア時代からのもので、そのころ、上流階級の女性にとって、除毛はお化粧の一部であり、社会的地位の高さを示す象徴、つまり、ステータス・シンボルでもあったとされています。


 古代ギリシャ彫刻のヴィーナス像(ミロのヴィーナス)の股間部にヘアの描写が彫られていないのはそのためです。


 上流階級の女性たちにみられる、このような除毛の習慣は、古代ギリシャだけではなくて、エジプト、ペルシャ、インド、そしてアラビアなどでも広く行きわたっていたようです。


 さて、ビキニのデザインが変わるにつれて、とくに胸の谷間(クリヴァージュ)や下腹部のカットラインの変化とともに、女性たちも、それに合わせるかたちで、ムダ毛のお手入れのしかたを、さまざま、工夫してきました。


 けれども、1960年代から70年代にかけて黒人のひとびとによる公民権運動が強まるなか、旧来の価値観に抵抗するかたちでフェミニズム運動とヒッピー思想がともにひろまり、「反男性至上主義」や「自然への回帰」という考えが時代の思潮(ツァイトガイスト)になりはじめ、ワキや股間のヘアをととのえたり剃ったりするのを拒む女性たちが増えてきます。


 それが1980年代になると、ファッションブランドのグローバル化とともに、ハイレグの水着が登場してきたため、ふたたびアンダーヘア(pubic hair)を刈ってととのえる(トリムする)という風潮がもどってきました。


 それどころか、たんにムダ毛をととのえる(刈る)というだけではなく、剃毛(シェービング)という行為までもがあたりまえになってきたのです。




 そして、2010年あたりになると、スマホやラップトップを通してのインターネット・ポルノビデオ(ネットポルノ)がひろまって、少年少女たちの性意識と行動に大きな影響をおよぼすようになり、さきほどお読みになった10代の男の子や女の子たちの除毛処理の流行とともに今にいたっています。




※この記事は2023年9月6日に公開されたスマホとネットポルノの影響力 | アメリカの10代(ティーンエイジャー)のセックス事情』という記事のショートバージョンです。






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