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Illustrated White Cats

My Works

 小説と呼ばれることばの「からくり箱」をシェアしているのは、作者のわたしと、それを手にとってくださった読者の方だけです。

 そして、この読者と作者のふたりっきり、という状態こそが「読書」なのだとわたしはおもっています。

 ふたりだけの秘密とプライバシーが守られているからこそ、小説は禁じられた世界をこじあけることができますし、禁じられた遊びにたわむれることも可能なのではないでしょうか。

 これが小説にそなわっている魅力のひとつですし、小説の美しさや醜さでもあるでしょうし、また、ときには、小説という散文形式がもたらす快感と危うさの〈みなもと〉でもあるのかもしれません。

S / エス

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少女の悪意とたくらみは、睡眠薬13個分

姉にたいする憧れと嫉妬にゆりうごかされながら、しだいに年上の男への好奇心をつのらせていく15歳の女子校生。けれども彼は姉の恋人でもあった。恋と性に興味を持ちはじめた、この多感な少女時代の不安と孤独を、クールな仮面とコミカルな反抗精神で乗り切ろうとする少女に、つぎからつぎへとふりかかってくる試練。追いつめられた少女はある計画を練りはじめていた。それがまわりのオトナたちになにをもたらすのかを知るすべもなく。

万華鏡(カレードスコープ)のような少女の心理と行動が奏でる不器用なくせに過激な不協和音。

(東京書籍から1995年に刊行された書籍の電子版です)

※エス(S)とはSisterの意味で、大正時代から女学生のあいだで使われはじめた、女の子同士の特別な関係をあらわした隠語でもある。​​

上昇時間 其の1

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エロティック短歌と俳句

歌の解説のかわりに、エロティックな体験と、それにまつわる秘話を告白した作品。

(抜粋)

 きっさてん

 あなたのはなし

 ながすぎる

 わたしのからだ

 そんなにまてない

 青春時代のデートはだいたいがこういうものでした。
 ふたりが慣れていないときには特にそうだったようにおもいます。
 相手の男の子は下心を気づかれたくないためにさまざまな話題をふって、コメディアンのようにふるまったり、知的な青年を演じてみせたり、趣味の話に興じてみたり…そのうちレスカ(レモンスカッシュ)が空になり、紅茶は冷めてしまい、ケーキの残りが固くなりはじめたのにも気づかないで、自分がもっとも望んでいる目的からどんどん逆の方向に走り出していくみたいでした。
 そんなに気づかってくれなくても、こちらはもう最初から「その気」になっていることになかなか気がついてくれないのが、男の子のいじらしさであり可愛らしさだったのかもしれません。​​​

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TOKYO、ナジャ、そして青空

あなたを困らせたかったのは
あなたを愛してしまいそうだったから

角を曲がったとたんに〈あなた〉にぶつかってきた女は、後日、ある書店で本のとりあいになった女だった。彼女はまた「メンヘラ女」の元祖ともいわれるアンドレ・ブルトン作の『ナジャ』をニックネームにしている女でもあった。わたしを好きになったら〈あなた〉はうんと苦しむわよ、と警告する女に、〈あなた〉はどうしようもなく惹かれていく。この、ナジャという予測不可能な女の目の奥にくすぶっている怒りと復讐心はいったいだれに向けられているのか。その怒りと復讐心はどこから来たのか。不治の病のように女をむしばんでいく過去の思い出から〈あなた〉は彼女を救いだすことができるのか。それとも彼女の思い出の渦に引きずりこまれてしまうのか。自分の気持ちに素直になることの大切さ、そして「いま・ここ」に生きることの大切さを問いかけてくる、思考するオトナのための物語

(光風社出版から1992年に刊行された書籍の電子版です)

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夏のはじまりでした

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ふたりは、愛しあった 愛して、傷つけあった
オトナのためのパッショネイト・フェアリーテール

田舎のバス停に立っていた女子大生を、自分のクルマに乗せて家まで送っていった葡萄畑で働く男。たったそれだけのことで始まったふたりの関係は、それぞれが住んでいる階層と世界を超えたものでもあった。その関係が激しい性愛へと変化しはじめたとき、そこには、同時に、彼女自身すらもが気づかなかった、自らの気持ちへのいつわりと裏切りが芽生えてもいた。また、そんなふたりを引き離すことなく、静かに見守っていた彼女の母親にも、遠い過去に埋めたはずの秘密があった。それを彼女が知ったとき、3人の関係は竜巻のように高速回転しながらすべてを破壊してのみこんでいく。

激しく危険なエロティシズムにあふれた大人のためのアブナイ童話。

ピンクのストローとライムソーダ

心の風景のひとつひとつを
ささやきで採集した
ことばの標本箱

だれかを好きになることで受けた傷の痛みは、いつか時の流れがいやしてくれるのだろうか。いつか甘美なものに変わるのだろうか。それとも、そんな日々を生きるということは、砂漠のなかを歩むようにむなしいものなのだろうか。女が味わうよろこび、悲しみ、不安、怒り、そしてしあわせを、捕虫網でつかまえては、ことばの標本箱にピン留めしていく。いま、目の前にある、この肌にふれることのできる現実と、おどろくほど美しく残酷で甘美な世界をひろげてゆく幻想との境界線を、あるときはゆっくりと、あるときは小走りに、あるときはたどたどしい足どりで、そしてときには立ちどまったりしながら、ことばの指先でえどっていく。その先に見えてくるものを知りたくて。 

言語詩 (Language Poetry) という流派の影響を色濃くうけた女から女へのラブポエム。

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水性都市

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ディストピアでふたりは水になる
愛による殺人を描いた散文詩

女の心のなかの〈空白〉を、〈性〉と〈死〉の色のまじったことばの色鉛筆でぬりつぶしていくとき、詩のなかにはどんな世界があらわれるのか……。水没する都市の片隅で殺された女と、その亡骸を埋めることすらできない殺害者。カリフォルニアの風景とは対照的な、シカゴの重厚な建築群の谷間で書きつづられたシュールレアリスティックなものがたり。これから先にあらわれるかもしれない世界と、そのなかで愛し合い憎しみ合う男と女とを、鉱物のようなことばでとらえようとする詩的な試み。

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