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  • 執筆者の写真香月葉子

DOMi & JD BECKの超絶技巧デュオを聴いて思い出す1970年代の超絶技巧フュージョングループ

更新日:2月18日


ジャンルの壁なんてスッと通りぬけちゃうふたりです


 たしか3年ほど前だったでしょうか、20歳にとどかない若さの女性キーボード奏者 Domi(ドミ)と、まだ高校1年生としかおもえないくらいの少年ドラマー J.D. Beck(ジェイ・ディ・ベック)のデュオが YouTube で話題になりました。そして、米国以外の国々でも、音楽関係の YouTuber の方々が、ふたりの超絶技巧ぶりを取りあげて、そのテクニックを分析し、わたしのような素人にもわかりやすく解説してくれたりしていました。


 そんなふたりも、いまでは、もう、メジャーの仲間入りです。


 ところで、キーボードとドラムスのデュオといえば、キース・ジャレットの正統的後継者ともいえるブラッド・メルドー(Brad Mehldau)と、現代ジャズドラムの開拓者、というよりも現代音楽におけるパーカッショニストと呼んだほうがいいかもしれないマーク・ジュリアナ(Mark Guiliana)を思い出す方もおられるかもしれません。

 とくに『ハングリー・ゴースト』(Hungry Ghost)のライブ演奏は洗練された大人のテクニックとアグレッシヴさに溢れていて、2014年のアルバム『Mehliana: Taming The Dragon』(メーリアナ:ドラゴンを手なずける)がいまだにアヴァンギャルドな香りを放っていることにお気づきになるとおもいます。


 さて、キーボード奏者のドミはフランス北部にある人口10万人ほどの街ナンシー出身だそうです。


 通り名は Domi Louna(ドミ・ローナ)ですが、出生名は Domitille Degalle(ドミティーユ・デュガル)で、14歳の彼女がフランツ・リストのエチュード『小人の踊りGnomenreigen(グノーメンライゲン)』を演奏している映像をYouTube で見ることができます。


 ボストンにあるバークリー音楽大学(Berklee College of Music)を卒業したばかりの、まだ22、3歳という若さの女の子ですけれども、リストの曲を選ぶだけあって、超絶技巧(バカテク)の持ち主です。


 そんなドミは、パリ国立高等音楽・舞踏学校『Conservatoire de Paris(コンサーヴァトア・ド・パリ)』を卒業したあと、大西洋を渡り、米国の大統領奨学生プログラムからの奨学金を受け、バークリー音楽大学のピアノ科で学びつつ、YouTuberとしてだけではなく、スウェーデンのデジタルキーボードメーカー『Nord(ノード)』が主催している『Nord Live Sessions』で演奏したり、また、若きキーボード奏者として、ファンキーでグルーヴィでジャジー(Funky, Groovy, and Jazzy)なスーパーグループ『Ghost-Note(ゴーストノート)』と共演したりもしました。



 また、サンプリング音源とシンセサイザーとを抱き合わせたハイブリッドな音源で知られる Omnisphere Session では、デジタル・キーボードによるソロを披露してくれてもいます。


 彼女が YamahaMODX8 を紹介している動画Roland RD-88 を紹介している動画もありますので、デジタル・キーボードにご興味がおありの方はぜひお立ち寄りください。

 フランス語訛りの英語で話しているドミは「super super kawaii」です。


 そんな Domi ですが、ファッションセンスも抜群で、彼女独特の、ポップで可愛くてサイケデリック(Pop & Cute & Psychedlic) な自己ブランド化(Self Branding)にも成功していて、これから先が楽しみなアーティストだとおもいます。


 ヨーロッパの香りをふりまく Domi とは反対に、18歳の J.D. Beckテキサス州ダラス市近郊の生まれ。5歳からピアノをはじめたらしいのですが、9歳でドラムスへと転向。わたしの大好きなエリカ・バドゥErykah Badu)という、この若いふたりと同じようにジャンルの壁を自由自在にすりぬけることのできるミュージシャンのグループでドラムスを演奏しているクレオン・エドワーズ(Cleon Edwards)と、さきほどご紹介した Ghost-Note のドラマー Robert "Sput" Searight(ロバート"スパット"シアライト)の教えを受けて成長したようです。


 そして、パイステ(Paiste)やサビアン(Sabian)とともに、世界中のドラマーの方たちにシンバルを提供してきた400年近い歴史を誇るジルジャン(Zildjian)のプロデュースによる『Zildjian Live!』では、Ghost-Noteと共演を果たしているだけではなく、師匠ロバート・シアライトがアレンジした楽曲で、スリリングで疾走感のある、すばらしいドラムソロを披露しています。


 演奏をはじめる前に、Ghost-Note のキーボード奏者 ザビエル・タプリン(Xavier Taplin)に「ぼくの演奏が気にいらないんだったら、気にいったようなフリをしなくていいからね」(If you don't like it, you don't have to act like you do.)なんて生意気な口をきいている場面もあって、とても可愛らしい超絶技巧(バカテク)少年です。


 ところで、この Ghost-Note には、ジャコ・パストリアスを思い出さずにはいられなくなる MonoNeon(モノ・ネオン)というベーシストがおられます。

 


1970年代の超絶技巧(バカテク)を誇るミュージシャンたち


 このふたりの演奏を聴いていると、英国のフュージョングループ『Brand X』の1976年のアルバムを思い出してしまうのはわたしだけでしょうか。


 ジャズ・フュージョンのアルバムでは、チック・コリア(Chick Corea)の『return to forever : hymn of the seventh galaxy』などがよみがえってきますし、Yellowjackets (イエロージャケッツ)の1981年のデビュー・アルバムもふたたび聴いてみたくなります。

 たしか、あのアルバムのなかにはわたしの大好きだった『It's Almost Gone』という曲があったはず、だなんて思い出してしまいました。


 マハヴィシュヌ・オーケストラ(Mahavishnu Orchestra)は1973年当時の学生たちが「バカテク・グループ」と呼びならわしていたジャズ・フュージョン・グループのひとつでした。ギタリストのジョン・マクラフリン(John McLaughlin)と鍵盤楽器担当のヤン・ハマー(Jan Hammer)とドラマーのビリー・コブハム(Billy Cobham)と電気ヴァイオリンのジェリー・グッドマン(Jerry Goodman)の4者によるかけあい(interplay)がとてもスリリングでした。


prompt by Kazuki Yoko | generated by DiffusionBee

 もちろん大御所のマイルス・デイヴィスの記念すべき1970年のアルバム『ビッチェズ・ブリュー』(Bitches Brew)や1971年ころのウェザー・レポート(Weather Report)も忘れてはいませんけれど、Domi & J.D. Beck がより鮮明によみがえらせてくれるのは、なんといってもアラン・ホールズワース(Allan Holdsworth)ではないでしょうか。


 とくに Domi がくり出してくるフレーズはアラン・ホールズワースのギターのフレーズを彷彿(ほうふつ)とさせるものがあって、彼のアルバムはかなり深く聴きこんでいそうな気がします。その上で彼のギターのフレーズとリフを鍵盤楽器に導入したのかもしれませんけれど、あの当時、アラン・ホールズワースという人は、元来ピアノでしか弾けないようなメロディを、ギターで弾いているとしかおもえないと言われていたことを思い起こせば、なんとなく納得できます。


 それからしばらくして、1987年に発売された彼のアルバム『Sand』の楽曲を耳にしたときは、ギターではなくて誰かがシンセサイザーを演奏しているのにちがいない、と信じて疑いませんでした。


 わたしはシカゴ大学のコンサート会場で、1988年、そのアラン・ホールズワース・トリオの演奏をライヴで楽しむという幸運にめぐまれました。

 彼は SynthAxe(シンセアックス:シンセサイザーギター)という、まるでSF映画に出てきそうなほど奇抜な形状をしたギターを抱き、そこから伸び出している細長い透明なストローのようなゴムチューブをくわえて、さながらサックス奏者のように息を吹きこむことで音量をコントロールしているようすでした。

 

 何人もマネのできない正確無比なテクニックと過去に類を見ないハーモニーとスケール。


 チック・コリアが率いるフュージョン・グループ『チック・コリア・エレクトリック・バンド』の前座でしたけれど、アラン・ホールズワースのすごさにチック・コリアが萎縮して、なんとか観客をもりたてようと無理なパフォーマンスをしているのは、だれの目にもあきらかでした。

 アラン・ホールズワース独特の『象の雄叫びギターソロ』(わたしの造語なのですが、これを言うたびにみんなに笑われました)がコンサート会場のすみずみまで沁(し)みわたり、パーフェクトな異世界を生み出したあとでしたので、あのチック・コリアさんもさぞかし気まずい立場におかれていたのでしょう。

 彼はなにしろ Soft Machine(ソフトマシーン)のギタリストでしたし、そのあとは、なんと Jean-Luc Ponty(ジャン=リュック・ポンティ)のグループにも参加していました。

 

 わたしは、1980年に、カリフォルニア大学バークレー校のゼラーバッハ劇場で、運良くふたりの演奏を耳にすることができました。

 ジャン=リュック・ポンティの電気ヴァイオリンとアラン・ホールズワースのギターによるインタープレイは、ある抽象的な命題にもとづいて、ふたりが流麗な対話を交わしているかのようでもあって、いまでもずっと耳に残っています。

 


prompt by Kazuki Yoko | generated by DiffusionBee

 Domi & J.D. Beck の演奏を耳にするたびにアラン・ホールズワースを思い出していたわたしですけれども、ふたりの初アルバム『No Tight』はとても煌めきのあるポップでキュートでメロディアスな曲にあふれかえっていました。


 しかも、Hip Hop やオルタナティヴ R&B の香りをすらまとっています。


 そのアルバムが、名門ジャズレーベルの代名詞ともいえるブルーノートから発売されたこともあって、このZ世代 (Generation Z)の新星アーティストと呼ばれるふたりを祝して、なんとなく、お酒を飲みたい気分になりました。

 




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