イスラエルは滅亡する? | 加速するネタニヤフ政権の崩壊
- 香月葉子

- 4 日前
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更新日:11 時間前
イスラエルがいま崩壊の危機に直面しています。
原因はいくつかあります。
① ガザやシリアやレバノンやイランにおいて、反イスラエル民族組織のハマスやヒズボラやフーシを根絶するという軍事目標は達成できませんでした。
② 表向きには言われていませんけれど、パレスチナ人全員を国外へ追いだすという民族浄化の目標もいまだに達成できてはいません。
③また、2年以上にもわたって、女子供の見境なくパレスチナ人を虐殺しつづけてきたことで、イスラエルの政治・経済・文化・軍事だけではなく、イスラエルの国民の精神にも悪影響がみられ、彼らを内部崩壊への崖っぷちへと追いこんでいます。
ナチス・ドイツによる被害者としてのブランド価値が暴落?
ネタニヤフ政権は、2023年10月からの2年間、休むことなくガザ市を空爆しつづけ、子供や女性をふくむ7万人以上のパレスチナ人を殺しました。
あらゆる建造物を破壊し、その9割を塵と瓦礫に変えました。


ただし、西側諸国の主要メディアでは、イスラエルによる破壊と虐殺の事実はほとんど取りあげられませんでした。
かわりにハマスやヒズボラやフーシなどアラブ系民族主義的組織を「テロリスト集団」として非難して問題視することにばかり焦点がしぼられてきました。
けれども、イスラエル国防軍の兵士たちが撮影した戦場の映像がソーシャルメディアで拡散されはじめたことから、第二次世界大戦中にナチス・ドイツ」が行ったユダヤ人の大虐殺(ホロコースト)と同じことが、いま、この21世紀の世界で進行中だということが明らかになりはじめたのです。
下着姿で後ろ手にされた数百名にもおよぶパレスチナ人の男性たちが瓦礫におおわれた街路に座らされている映像。
水と食べ物をもらうための容器を手にした痩せ細ったパレスチナ人の子供や女性たちめがけて冗談半分に発砲するイスラエル国防軍の兵士たち。
病院を爆破し、その建物が崩れ去っていくのを背景に自撮りしている国防軍の兵士たち。
ブルドーザー数台で掘った深いみぞのなかにずらりとならべられている青色のビニール袋につつまれた数多くのパレスチナ人の死体。
そういう惨状が世界中に知れわたりました。
ただ、そのような虐殺を行いつつ計画的な飢餓をもたらしているのがナチス・ドイツの被害者だったユダヤ人であるということが、いま、パレスチナ問題をいっそう複雑で解決困難なものにしています。
にもかかわらず、ネタニヤフ首相の言い分はいつも変わらず「ハマスのせいだ」と「パレスチナ人は女・子供をふくめて全員がテロリストであり罪のない者はいない」という2点のみ。
とはいっても、この残酷な事実から目をそらさずにいた地政学者や思想家や作家やYouTuberたちの抗議の声が、おなじくソーシャルメディアをつうじてZ世代の若者たちにも届くようになり、各国の有名大学のキャンパスや街路ではパレスチナの解放と平和を訴えるデモンストレーションが数多く見られるようになりました。

そのようなデモにはかならずといってもよいほどユダヤ系の学生や市民が参加しています。
彼らは率先してアラブ系市民をひきいれ、デモによってパレスチナ問題をめぐる波紋を広げているため、ネタニヤフ首相や祖国のイスラエル市民からは「裏切り者のユダヤ人」あつかいされたり『自己嫌悪型ユダヤ人』(self-hating jew)と呼ばれて白眼視されたりしています。
ホロコースト産業はもうデッドエンドなの?
国際法を無視したイスラエルの残虐行為にたいする抗議デモの勢いはフランス・ドイツ・イタリア・オランダなどで特に増しており、ロシア・ウクライナ紛争にたいする反戦デモとまざりあって街路を埋めつくしています。
また、国連においても南アフリカ共和国を筆頭にさまざまな国々が(わが国もそうです)イスラエル政府を糾弾し、ネタニヤフ首相を戦争犯罪人として裁く手続きをすすめています。
イスラエルの国としてのブランド価値は地に落ちました。
犯罪国家『イスラエル』と呼ばれるくらいにそのブランド価値は暴落したのです。
2025年の9月以降は〈人種差別国家〉〈テロリスト国家〉〈ファシスト政権〉などとも呼ばれています。
欧州で暮らしていた600万人にもおよぶアシュケナージ系ユダヤ人は、第二次世界大戦のさなか、ナチス・ドイツによるユダヤ人狩りとアウシュビッツやダッハウ強制収容所での大量殺戮による犠牲者になりました。
その人類史上かつてないほどの悲劇を忘れないために数限りない書物や映画やテレビドラマがつくられました。
たとえば『夜と霧』や『アンネの日記』に代表されるような実話をもとにしたホロコースト体験記や、おなじく実話にもとづいた『関心領域』や『シンドラーのリスト』や『戦場のピアニスト』などの映画もあります。

それら全ての作品の意義と価値がネタニヤフ政権のせいで『無化』されようとしているのです。
なぜなら、それに匹敵する残虐行為を世界のひとびとの目の前で、現在パレスチナ人にたいして犯しているのですから。
「わたしたちユダヤ人はこんなひどい目にあわされました」
「あ、そ。でも、同じことをパレスチナ人にしてるよね」
こういう見解が米国や欧州で暮らしている若い世代のあいだにひろまっています。
だからこそ、アウシュビッツ強制収容所でじっさいに両親や兄弟や親族を殺され、しかも生き残った方たちは、シオニズムに染まったイスラエルという国家を批判しているのです。

たとえばホロコーストに関係した小説や体験記や映画やドラマなどすべてを『ホロコースト産業』と呼んで批判してきたノーマン・フィンケルスタインのようなアシュケナージ系ユダヤ人の政治学者さんもいらっしゃいます。
彼に言わせると、イスラエル・ハマス紛争のせいで「ユダヤ人学生のわたしたちはこんな差別を受けている」と抗議してすすり泣く米国の大学生たちは『クロコダイルの涙』(ウソ泣き)を流しているにしかすぎない、ということでした。
このように世論が変わっていくなかでふたたび元のイスラエルのイメージをとりもどすのには50年から60年、およそ2世代にわたる努力が必要になるだろう、とユダヤ人の歴史家で国際関係論の学者でもあるアヴィ・シュライムさんは述べています。
自滅への道をつきすすむイスラエル?
第二次大戦時のユダヤ人大量殺戮に加担した罪の意識に深く染まっていた欧州諸国においてすら、ユダヤ人であるというだけで祖国イスラエルがおこなっている大量殺戮からの免罪符を得ることはできないという意識が一般市民のあいだで強まっているのが現状です。
また、現在、イスラエルにたいする世界的な憎悪が高まっていることも事実ですし、さきほど述べたように、その兆候はいたるところにみられます。
そのせいで、イスラエルでは200万人近い国民がアルコール依存症や憂鬱症に悩まされるようになり、自殺率も急上昇しているようです。
つまり、ネタニヤフ首相のせいで、欧州やカナダや米国などで暮らしているユダヤ人の方々までもがずいぶん肩身の狭い思いを味わされているわけです。
各国に散らばっているユダヤ系市民にとってはたいへん危険な状況がうみだされているといっても言いすぎではありません。
彼らが不安になるのもとうぜんでしょう。

その身の安全をおびやかすような状況をつくっているのが、皮肉なことに、彼らの避難所(サンクチュアリ)であるはずのユダヤ人国家イスラエルそのものなのです。
とはいってもパレスチナのひとびとが味わっている不安と苦しみと被害の現実とは比較になりません。
パレスチナの子供たちは両親を殺され、祖父母を殺され、兄弟だけではなく従兄弟や叔父や叔母などの親族までをも失っただけではなく、自分の手足の一部を失ったり視力や聴力すら奪われた子供たちなのですから、そこから立ちなおるのはほとんど不可能に近いかもしれません。
元の生活が送れるような状態を手にいれるためには、すくなくとも2世代にわたる時間が必要だといわれています。
みんながみんな気が狂っているところではみんな正気だってことにもならない?
イスラエルの市民だけではなく、現在ではイスラエル国防軍の兵士たちの自殺率がとんでもないことになっています。
たとえば過去2年間、米国で兵役についている人たちの自殺率は人口10万人あたり12.5~14.5人、英国の兵士たちでは人口10万人あたり9.5~11.5人、ちなみにわが国の国民はどうかといえば10万人あたり17.6人(2023年)で、一般市民を比較したときにはG7(先進7カ国)のなかでもっとも高い水準にあるようです。
ただし、イスラエル国防軍の兵士に目を向けてみますと、10万人中に125人という結果が出ていますので、桁がひとつちがいます。
イスラエル兵は怒りっぽく、ちょっとした言い争いから相手に椅子を投げつけたりテーブルをひっくりかえしたりするし、笑いはじめたらとまらなくなったり、特別な理由もないのに大泣きをはじめたり、いつまでもブツブツとひとりごとをつぶやきつづけたりする。

そんな国防軍の兵士たちを撮影したビデオ映像がイスラエルのテレビ放送局でとりあげられて問題になりました。
また、パレスチナ人擁護をうったえる超正統派ユダヤ人の方たちが諸外国から移住してきたシオニズムを信奉するアシュケナージ系ユダヤ人市民にツバを吐きかけられたり殴られたりしている映像も流されました。
それだけではなく、そのような超正統派ユダヤ人にたいして「あなたたちこそヒットラーに皆殺しにされるべきだった」と叫んでいるイスラエル市民たちの姿も映し出されました。
イスラエル国内では、いま、シオニストとキリスト教徒と超正統派ユダヤ教徒とのあいだで、それぞれの意見の対立と分裂がとまりません。
つまり、イスラエルという国そのものの精神衛生が、現在、ほとんど壊滅的ともおもえるほどの危機に瀕しているのです。
国民がいなくなったら国はどうなるの?
『米国による一極支配 vs. BRICSによる多極体制 | アメリカ帝国最後のあがき?』というエッセイのなかでつぎのように書きました。
《また、長くイスラエルで暮らしていた人々も、現在、キプロス島やギリシャやモロッコへと移住をはじめ、そこを第2の故郷とさだめる人々の数(550,000人)が驚くほど増えているとも報道されています。》
いまではすでに200万人以上のひとびとがイスラエルを脱出して他国のパスポートを取得しているようです。
なにしろイランから飛来するミサイル攻撃におびえ、空襲警報が鳴りひびくたびに地下鉄駅に非難して、そこをシェルター代わりにしなければならなかったのですから。
でも、たとえ国外へ逃げたとしても、ユダヤ人はそれらの国において小数民族として生きていかなければなりません。
そこで『のけ者・不可触民』(Pariah パライア)認定されてしまうと、もうどうしようもありません。
ふたたびユダヤ人差別の波に押し流されてしまう可能性すらあります。
お金持ちの両親のもとで育ったユダヤ人のお坊ちゃまやお嬢さまがイスラエルを出て、タイやマレーシアやフィリピンやベトナムで優雅な日々を送り、その暮らしぶりをソーシャルメディアの『インスタグラム』や『X』などにアップロードして地元民から白い目で見られているようすが、その同じソーシャルメディアのプラットフォームで取りあげられているのをたびたび目にしますが、これから先、世界のいたるところでそういう場面に遭遇することがあるのかもしれません。
白い目で見られる、くらいはだれでもが味わうことかもしれませんが、それがほんのちょっとしたきっかけでエスカレートしていき、ふたたび差別・偏見・迫害といったユダヤ人問題にまで発展するのはあっという間だとおもいます。
紀元2世紀ころに聖地エルサレムから追い出され、さまざまな国をめざしてちりぢりになってしまったユダヤ人。
ディアスポラ(国外離散)と呼ばれた悲劇です。
それ以降は欧州各地で2千年近くのあいだ差別と迫害を受けつづけ、彼らは忌み嫌われてきました。
ユダヤ人にとって安心に暮らせるところは、おそらくどこにもなかったのでしょう。
だからこそユダヤ人国家の建設というシオニズムの主張をカタチにしなければならなかったのです。
イスラエルはユダヤ人にとって念願の祖国でした。
そのためには国民が必要になります。
国民のいない国家はありえません。
ユダヤ人が移住してくれなければイスラエルというユダヤ人国家は成り立たないのです。
多ければ多いほど国力は増していきます。
少なくなればなるほど国力は弱まっていきます。
知力・財力・労働力は国家にとってのいちばん大切な原動力、つまり3種の神器みたいなものだということはまちがいないわけですから、少子化によって老人大国になってしまったわが国が、その悩みと苦しみをいちばん理解しているでしょうし、そのあたりの事情にはいちばん精通しているはずなのです。
兵士がいなくなったらどうやってガザを占領支配するの?
つまり国家の繁栄はひとえに『ヒト』にかかっています。
経済活動をにぎやかにしてくれるのも、もちろん『ヒト』です。
だからこそ、自然科学を学んだ方たちが口をすっぱくしておっしゃってきたように、経済にとっていちばん大切なのは『お金』ではなくて、まずは清浄な『空気と水と土地』なのです。
食料を生み出してくれるものがなければお話になりません。
ヒトの命と健康が保たれなければどうしようもありません。
「生産者」や「労働者」や「消費者」といったことばそのものが意味をなさなくなります。
そこにヒトが生きているからこそお金を産み出すための経済活動も成り立つのですから。
福島原発事故がもたらした被害とその結果を見れば明らかなことだとおもいます。
軍隊ではなおさらです。

いくら一発で数万人を殺せるような最新兵器があるからとはいっても、ある現実の場所を占領して統治しなければいけないときがおとずれたら、けっきょく地上戦を避けることはできなくなりますし、そのときには頭数が火力なのです。
そのイスラエル国防軍が、いま、窮地に立たされています。
国防軍(IDF)への志願者数は過去40年間で最低だということです。
また、世界のいたるところでイスラエル兵が戦争犯罪と大虐殺の罪で逮捕されるような状況がうまれてもいます。
逃げまどうパレスチナ人の子供たちや女性たちを撃ち殺したり、食事中の家族がいる建物にミサイルを発射して生き埋めにするような戦闘を体験したせいで、PTSD(心的外傷後ストレス障害)をわずらい、精神を病んで、兵役を逃れるために脱走兵になるイスラエル国防軍の兵士たちが増えていると報告されています。
そのうちの数千人が、最近、ポルトガルの市民権を取得しようとやっきとなっているという情報も入ってきました。
また、国内においても、イスラエルの一般市民たちが国防軍へ非難の矛先を向けています。
なぜなら、イスラエルでは、現在、50代以上の年齢の方々で軍隊経験をもつひとびとをあつめて新しい大隊(バタリオン)を結成していて、そのことから、いかに戦闘要員が足りなくなっているかがあらわになってきたことも理由のひとつのようです。
また超正統派ユダヤ教徒のひとびとにも徴兵を命じなければいけなくなりました。
第二次世界大戦末期、ナチス・ドイツが崩壊の瀬戸際にあったころ、首都ベルリンを死守するため、という理由で、敗北するまでの数日間、小学校に通うような子供たちから70歳の老人までもが強制的に民兵にされて死んでいきました。
わが国でも同じことが起こりました。
攻め入ってくる連合軍にたいして『一億玉砕』という思想をかかげて、重機関銃や戦闘機や爆撃機にたいして「竹槍」で戦い、それでも国を守ることが叶わなければみんなで一緒に美しく散ろう、というような妄想に国全体がとりつかれたのです。

ウクライナでも同じことが起こっています。
それぞれの国の支配層は、戦争が終わったあと、彼らが犯した罪を責められないために、国民全員がひとりのこらず消え去ることを夢に見るようです。
国が敗北するまぎわにはたいていそのような亡国思想が頭をもたげることは世界の著名な歴史家たちが古くからずっと言いつづけてきたことでした。
それは古代ローマ帝国時代から変わりません。
あの10月7日のハマスの奇襲攻撃ってほんとうはなんだったの?
現在、あの日の出来事に関する政府による発表がことごとく嘘八百だったということがイスラエルの国会で暴露されはじめました。
じつはイスラエル政府はあの2023年10月7日にハマスが奇襲攻撃をしかけてくることを知っていたのだそうです。
にもかかわらず、ネタニヤフ首相は、その被害を最小限におさえるための努力をしなかったどころか、軍に撤退を命じてハマスの好き放題にさせたのです。
そのことがイスラエルの国営放送をつうじて日の目を見ることになりました。
そのせいで数多くのひとびとが殺され、何十人ものひとびとがハマスに拉致されてしまったのだ、と国防軍の兵士たちが国会で証言をはじめました。
すべては嘘だった、と。
その嘘によってネタニヤフ首相はガザへの侵攻と攻撃と大量殺戮をおこなう口実を得たのだ、と、そのように兵士たちは述べています。
たとえば『イラン・イスラエル戦争の原因と背景 | 不可視の洗脳と最終戦争への序曲』という記事のなかでわたしはつぎのように書いています。
《ようやく今年になってイスラエル国防軍(IDF)の兵士たち自身による証言によって明らかになってきたことなのですが、あの10月7日、ハマスの奇襲攻撃がはじまる直前からその最中にかけて、つまり午前5時20分から9時までのあいだ、前哨基地にいた副大隊長に上層部からパトロールに出てはいけない、という停止命令が出ていたということです。
それだけではなく「撤退命令」(スタンド・ダウン)が出されていたらしいのです。
「この場所は地球上でもっとも監視がきびしい場所とも言われているほどに危険区域であるのにもかかわらず、なぜいつものように前線パトロールの停止命令が出たのか不思議でならなかった」とイスラエル国防軍の兵士たちが証言しています。
また「ハマスによる襲撃があったという情報が入ってきたのにもかかわらず、なぜ戦いに参加できないのか理解できなかった。けれどもわれわれ兵士は上層部の命令には逆らえないので歯をくいしばって耐えるしかなかった」とも証言しています。》
若いユダヤ人たちのシオニズム離れが止まらないのは?
これは深刻な問題を生み出しているとおもいます。
ユダヤ人は、世界のさまざまな国々で、過去数千年のあいだ差別・偏見・迫害にあってきた民族です。
「だからこそ、ユダヤ人同士が助け合うのはとうぜんだし、ユダヤ人が安心して安全に暮らせるユダヤ人だけの国をつくることは、ユダヤ人にとって長いあいだの夢であり願いである」
これがシオニズムの根っこに息づいている考え方です。
にもかかわらず、パレスチナ人を大虐殺して民族浄化をおしすすめ、ガザ市をイスラエルの領土にくわえるための口実と大義名分を得るためだけに、ネタニヤフ政権は彼らの同胞であるユダヤ人の一般市民を犠牲にしたのですから、シオニズムの根幹がゆさぶられたことになります。
そのせいで、世界各国に根をおろした家庭で育ち、幼少時からユダヤ人学校にかよってシオニズムの『思想的洗礼』を受けてきた若者たちが、いま、イスラエル主義から離れていっているという報告が相次いでいるのでしょう。
これは米国のアシュケナージ系ユダヤ人投資家や銀行家の資金によって運営されているAIPAC(イスラエル・ロビー)にとって頭の痛い問題です。
去年2024年に『Israelism』(イスラエル主義)というドキュメンタリーを観たのですけれど、米国の地方で暮らすユダヤ系アメリカ人がどのように育てられるのかを知っておどろかされました。
すばらしい映画でした。
もともとはこの映画の案内役でもありナレーターでもあるシモン・ジンマーマンという女性がカリフォルニア大学バークレー校で学んだひとだと知って興味がわいただけのことだったのですが、「目からウロコが落ちる」という形容がぴったりのドキュメンタリーだったことをおぼえています。
世界中から憎まれる国になったのはあなたのせいです
イスラエルはこれまでハマスやヒズボラやフーシなどの反米・反イスラエルとみなされている民族組織の指導者たちを暗殺してきました。
毒蛇の頭を切り落とせば万事解決、という方策をとってきたのです。
『イラン・イスラエル戦争の原因と背景 | 最終戦争へのプロセスと不可視の洗脳』という記事のなかでつぎのように書きました。
《それだけではなく、2024年の7月末日には、レバノンに空爆をおこなって反イスラエルの武装組織ヒズボラの司令官を殺害したすぐあとに、おなじ手口で、しかもこんどはなんとイランの首都テヘランにおいてイスラエルにたいする抵抗組織ハマスの政治的指導者を暗殺したこともまだ記憶に新しいとおもいます。》
けれどもそれらの民族組織は、リーダーを暗殺されるたびに、さらに若いメンバーを増やすことに成功して強くなっただけではなく、いっそう過激にもなりました。
そんな戦争犯罪を犯してきたネタニヤフ政権をサポートするかたちで、たとえばイスラエルの主要テレビ局に出演した解説者のひとりなどは「ハマスがおこなった2023年10月7日の奇襲テロ事件は神があたえてくれたチャンスなのです。わたしたちはガザに侵攻し、毎日10万人から15万人のパレスチナ人を殺すべきなのです。それがイスラエルの安全と平和を守るゆいいつ道なのです」と述べています。
こんな意見を国の主要テレビ局が制作した番組で日夜見聞きしているイスラエル市民にも同情しますけれど、それをそのまま信じて、かたくなに現実を見ないようにしようとする心の状態にはさらなる悲劇を感じないではいられません。
それだけにネタニヤフ首相に抗議するひとびとの数も増しているのでしょう。
それはハマスの捕虜になっている息子や娘たちを取りもどしてくれと願っていた親たちだけではなく、イスラエル国防軍に子供たちをあずけている両親をふくむ一般市民たちにまで広がっています。
イスラエルの崩壊が中東状況を安定させてくれるかも?
めまいを起こさせるほどのスピードで進んでゆくネタニヤフ政権の崩壊。
そのおかげで、もしかしたらイランとの全面戦争を避けられるのではないかという希望を抱いてしまうのはわたしだけでしょうか?
とはいっても、現在、ヴェネズエラとの問題やロシア・ウクライナ戦争および台湾の問題を口実にした中国とのかけひきによって、米国の主要メディアはパレスチナ問題をふくめたイスラエルの戦争犯罪と中東紛争の現状を話題の中心から消しさることに成功しています。
また YouTube は2025年12月までに、パレスチナの惨状を映し出しているビデオとイスラエルの戦争犯罪と人権犯罪をドキュメントしている700以上にもわたるビデオ映像をひっそりと削除し、かつ、そのチャンネルが収益化されないようにコントロールしていたことが判明しました。
その陰で米英両軍はカタールやクウェートなどに点在する中東の軍事基地などへ、かつてないほどの弾薬・兵器・兵士たちを送りこんでいるようです。

もしもイスラエル・イラン戦争がふたたび勃発したら、こんどはおそらく米英を筆頭とする「西側諸国」は崩壊の岐路にたたされるかもしれません。
ロシア・中国・インドなどのブリックス諸国が黙ってはいないからです。
しかもロシアと中国の兵器はG7に代表される「西側諸国」の技術をはるかに上まわっています。
兵士の数も桁違いです。
それが現実です。
そのような戦争がはじまれば、G7に属している国々の経済崩壊だけにとどまらず、いわゆる「西側諸国」の精神と文化の崩壊にもつながるおそれがあります。
そうなると、原油のほとんどを中東諸国、とくにサウジアラビア・クェート・カタールなどから輸入しているわが国の経済にも悪影響をおよぼすことになるでしょう。
そして、いちばんの問題は、現在のわが国の政策では、この不安の種をつみとることがかなりむつかしいことにおもわれる、というその一点なのです。
すべては米国の出方ひとつにかかっているのですから。
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