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イラン・アメリカ戦争がもたらすエネルギー危機と今後のシナリオ

  • 執筆者の写真: 香月葉子
    香月葉子
  • 2 日前
  • 読了時間: 25分

更新日:17 分前



 今回の中東戦争の概況と予測分析は次のものです:


【アメリカ】

 敗北します。

 底なし沼にひきずりこまれるように、もがけばもがくほど、暴れれば暴れるほど沈んでいって、なにをどうしても抜け出すことができず、なにをどうしても勝てないとおもいます。


 この窮地からのもっとも楽な脱出法(イージー・ウェイ・アウト)は、太平洋戦争のさいにこの日本にたいしておこなったのと同じように核兵器を使うことでしょう。

 米国だけではなく、とくにイスラエルにとっては、かなり可能性の高い手段だとおもいます。

 でも、その最終手段を実行すると、イランの革命防衛隊も最終手段でそれにこたえるとおもわれます。

 それは湾岸諸国の石油施設をすべて破壊することです。

 そうなると世界は過去に経験したことのないエネルギー危機によって、株式市場は暴落し、世界経済は破綻し、さまざまな国で(わが国も例外ではありません)食糧が不足しはじめ、「アメリカ帝国」と「シオニスト国家イスラエル」の国際社会における信用は瓦解するはずです。


 2月28日、米国とイスラエルがおこなった奇襲攻撃で、イランの最高指導者アヤトラ・アリー・ハメニイ師と彼の家族が殺害されたことを知りました。


 しかも、イランのその最高指導者はまるでそれを待っていたかのように自宅の地上の部屋にいたという情報を耳にしました。

 その瞬間、初日にして「あぁ、アメリカは負けてしまう」と確信しました。


 みごとにアリー・ハメニイ師の罠にはまったと感じたからです。


 米軍が湾岸地域において軍備を増強し、いつ戦争がはじまってもおかしくない2月末の状況下で、地下壕へ避難することもなく、googleマップで調べることすらできる自宅の地上の部屋でハメニイ師は死がおとずれるその瞬間を待っていたのですから。


 翌日、イラン革命防衛隊の指揮官たちが「身の安全を考えて地下壕へ避難してください」と頼んだのだが、ハメニイ師は「いつものようにすごしたい」と答えて自宅のいつもの部屋で家族といっしょにすごしていた、という発表を耳にした瞬間、どうしようもない結末が見えてしまいました。


 ハメニイ師は「殉教者」(マーター:martyr)になることを選んだのです。


 イスラエルのネタニヤフ首相のように逃げ隠れする指導者になることを拒んだのでしょう。


 この死によってイランの国民の心は完全にひとつになったはずです。

 社会心理学の初級コースで学べる単純な集団心理のダイナミクスです。

 燃えるような愛国心の炎が全土にひろがったのにちがいありません。

 米軍の攻撃が彼らを一致団結させたわけです。


 東京大学の鈴木宣弘名誉教授がおっしゃった「今だけ、金だけ、自分だけ」という価値観で動いている側の人間にとっては、かなり手ごわい相手をめざめさせてしまったのではないでしょうか。


 イランは、過去25年間、この戦争を念頭においてあらゆる準備をしてきた国だと言われています。

 米国・イスラエルによる今回の戦争に備えてきた国なのです。


 いま運転席にこしかけているのはイランです。

 後部座席でクルマの揺れにびっくりしながら手すりをにぎりしめてふりまわされているのは米国です。


 にもかかわらず全世界に「われわれは勝っている。われわれは世界最強なのだ」という口先だけのプロパガンダを流しつづけているのがヘグゼス戦争長官とトランプ大統領です。


 アメリカは経済的に敗北し、軍事的にも敗北し、「民主主義」と「人権擁護」と「高度な資本主義の具現者」という過去80年間にわたって作り上げてきたイメージに亀裂が入り、同盟国からの信用を失う可能性すらあります。


 また、イスラエルにそそのかされて世界経済を崖っぷちに追いやった張本人というレッテルを貼られることも考えられます。


 迎撃用ミサイルだけではなく攻撃用の爆弾やミサイルも底をついてきました。

 しかも生産力ではとうていイランには追いつけません。

 なにしろ韓国からTHAAD(弾道弾迎撃ミサイル)を回収してイスラエル防衛のために持ち去っただけではなく、おなじことを湾岸のアラブ諸国にたいしてもおこなったわけですから、同盟国からの信用を失いはじめたとしても不思議ではありません。


 ジョージ・W・ブッシュ政権で第65代国務長官を務めたコリン・パウエルの参謀総長だったローレンス・ウィルカーソン大佐によると、トランプ大統領と彼の側近は、ハメニイ師殺害からわずか5日間で、アドルフ・ヒトラーが第二次世界大戦中に犯した戦争犯罪の数をはるかに上まわる戦争犯罪に手を染めた、と批難しています。


 イランの新しい最高指導者は米国・イスラエルの爆撃によって殺害されたハメニイ師の二男のモジダバ師。

 1980年に勃発したイラン・イラク戦争の戦場へみずから志願して17歳でおもむき、友人や知人をうしなった実戦体験を通し、戦争の冷酷さと悲劇だけではなく、その戦争がもたらす現実とメカニズムを学んだとされています。

 一国の元首のご子息とはいえ、セックスと薬物依存症でコカインパーティにうつつを抜かしていた元米国大統領ジョー・バイデンさんの息子さんのハンター・バイデンさんとは真逆の人生を歩んできた方です。

 そのためイラン革命防衛隊からも厚い信頼を寄せられているそうです。

 今回の米国・イスラエルによるいわれのない攻撃(unprovoked attack)によって父と母と妻をなくした方でもあるので、わたしたち西側諸国にたいしては妥協をゆるさないシビアな政策と冷徹な戦術がつづくとみられています。


 トランプ大統領は苦しい立場にたたされ、中間選挙に敗北するかもしれません。

 34件にもおよぶ重罪で有罪評決をうけているトランプ大統領ですが、それらにくわえてこんどは米国における戦争法違反で収監されるおそれがあるだけではなく、国際法違反(とくにジュネーブ諸条約)を犯したことでオランダのハーグにある国際刑事裁判所から訴追される可能性すらあります。


 もしくはイラン側の要求をのんで米軍を中東から完全に撤退させ、イスラエルを見捨てることで中東に安定と平和をもたらし、「この歴史的快挙を成し遂げたのは自分である」というプロパガンダによって、開いた口がふさがらないような『ありえない』ノーベル平和賞を授与されることになるかもしれません。


 それもけっして夢物語ではありません。


 なにしろ8時間前のことはすぐに忘れてしまう世の中ですから、この結末もけっして実現不可能なシナリオではないかもしれないのです。


 大手メディアとインフルエンサーたちによる圧倒的なプロパガンダとノルウェーの『平和賞』の最終選考にたずさわっている関係者たちをワイロの洪水で溺れさせれば可能だとおもいます。



【イスラエル】

 壊滅的敗北を味わうことになるとおもわれます。


 イスラエルのレーダー施設をふくむ軍事拠点の大部分は破壊され、ハイファにある石油精製所は爆撃を受けて損傷し、イスラエル国防軍の地下中央司令部が存在するとされているテルアビブのレオナルド・ダ・ビンチ通りの地下施設はイランから飛来したクラスターミサイルによる攻撃を受けたようです。


 着弾したことは確かめられていますが、不思議なことに、その直後から、イスラエルはその近辺の衛星画像をぼやかしてしまい、ぼんやりした市街風景しか見られず、そのことに関するいっさいの軍事情報(インテル)を封じこめています。


 米国の空爆による被害を隠すことなく公開するイラン側の「情報の透明性」に重きをおく立ち位置と、国内の被害を包み隠し、すこしでもその情報や映像をネット上に流出させた者は法的に裁かれるとするイスラエル側の立ち位置そのものが、この戦争の行方を物語っているようにおもわれます。


 テルアビブやハイファなどの主要都市もイランによるドローン・ミサイル攻撃を受けつづけていることはイスラエル政府に雇われていた中国人労働者たちがネットにアップロードしたビデオ映像で確かめられています。


 インフラは壊滅状態になるでしょう。


 とはいっても、攻撃前にかならず一般人の避難勧告をうながすイラン革命防衛隊(IRGC)の戦術に変化がないかぎり、これから先もイスラエルの人的被害は最小限におさえられるとおもいます。


 ただ、日夜終わりなくつづく攻撃のために、防空壕や地下鉄での非難生活を強いられているイスラエルの国民は精神的・肉体的・経済的にも疲れ果てていくでしょう。


 海外へ脱出するひとびとの数はさらに増えつづけるはずです。

 そのため兵力と労働力の不足が深刻な状況をうみだすとおもわれます。


 おそらく『国家存亡の危機』(existential threat)にみまわれるでしょう。


 ただ、現在はイスラエルの大空港『ベン・グリオン』がドローンとミサイルの攻撃を受けて閉鎖されているらしいので国外へ逃げ出すことすらできないようです。


 イランは戦争計画書通りに事を運んでいるはずです。

 スケジュール表に従ってひとつひとつ着実にチェックマークを入れながら。


 ネタニヤフ政権は崩壊し、イスラエルでは政権交代がおこるとおもわれます。


 将来、イスラエルという国が無くなることはありませんが、シオニストによる人種隔離政策(アパルトヘイト)をおこなってきた『イスラエル』という国家は消滅する可能性があります。


 米国の『噛ませ犬』中東の『狂犬』と呼ばれ、成文憲法すらないまま、一党独裁(パルタイ)に近い政治をおこなってきたイスラエル。


 憲法の存在しないこの国にはレジーム・チャンジがおこり、この戦争が終結したあと、はじめて真の意味での『民主主義国家』として再出発する可能性がおとずれるかもしれません。


 ただしネタニヤフ政権の長きにわたるプロパガンダのせいで宗教的カルト集団に洗脳されたかのような93%にもおよぶ国民は、国外脱出組の方々もふくめて、これから先、苦しい辛い心的外傷後ストレス障害(PTSD)との長い戦いが待ちうけているようにおもわれます。


 子供と女性をふくむ何十万人というパレスチナ人を虐殺してきたのですから。


「世界中の国々とひとびとはユダヤ人を忌み嫌っている。われわれユダヤ人をひとり残らず滅ぼそうと手ぐすねを引いて待ちかまえている」というシオニスト政府による①『恐怖心をあおる政策』(fearmongering)にくわえて「われわれユダヤ人は人類のなかでもっとも優れた人間であり、世界中の非ユダヤ人(ゴイム:Goyim)はわれわれに支配されるための人間以下の存在だ」というシオニズムによって歪められた②『ユダヤ人至上主義』を抱き合わせることで、現在のイスラエルの国体と国民性はかたちづくられてきました。


 それだけに、この思想的影響から抜けだすことは容易ではないはずです。


 この思想をまるでユダヤ教であるかのように信仰することで、パレスチナ人だけではなく、周辺の中東諸国(イエメン・レバノンなど)の国民にたいしても残酷きわまりない民族浄化政策をおこなってきたのですから、とうぜんのことかもしれません。


 イスラエルによって追い出されたアラブ系難民の数はあまりにも膨大で、現在では西ヨーロッパ諸国を衰退させる原因のひとつにもなっています。


 現在、いちばん懸念されていることは、壊滅状態に追いつめられたイスラエルが「サムソン・オプション」に手をのばすのではないかという可能性です。

「サムソン・オプション」(Samson Option)とはイスラエルが国家存亡の危機にみまわれたときには敵国のみならず自国にたいしても核兵器を使用して壊滅させるという最終的な軍事戦略のことです。


 それは太平洋戦争末期に大日本帝国が抱いた一億玉砕という『亡国思想』と変わりません。


 つまりイスラエルをこの地上から消し去るときには、かならず相手も道連れにする、という核攻撃をあらわしています。


 これが今回の中東戦争終結をのぞむとき、もっとも危険な要因のひとつになることはまちがいありません。



【イラン】

 勝利します。

 けれども世界一の軍事大国アメリカとの非対称戦争(asymmetric warfare)によってさらに多くの犠牲を払うことになるとおもいます。


 47年間にもおよぶ西側諸国からの経済制裁のせいで経済的に苦しい立場におかれながら、その貧困生活を耐えぬいてきたイランという国。


 この国は「パレスチナを国家として認め、ムスリムの同胞としてパレスチナ人を守る義務がある」ということを立法化している国でもあります。

 だからこそヒズボラ・ハマス・フーシなど反イスラエル・反アメリカ帝国主義の武装組織や民族組織を背後からサポートしてきたというのが事実です。


 けれども、パレスチナ人を守るために戦いつづけてきたこのイランという国は、イスラエルとの腐れ縁を断ち切れない米国政府からは『悪の国家』『テロリスト国家』と呼ばれてきました。

 この『悪の国家』イランは、和平交渉をおこなっている最中に、相手の米国・イスラエルからとつぜん「いわれのない攻撃」を受け、最高指導者と政府の関係者を殺され、テヘランの市民の多くも亡くなりました。

 160人を超える8歳から13歳までの女学生たちも殺害されました。

 2025年の6月の事件をいれると、和平交渉に呼び出された最中に攻撃されたのは、これで2度目になります。


 にもかかわらず、わたしたち西側の大手メディアは米国・イスラエルにたいする非難の声をあげませんでした。


 ロシア・ウクライナ戦争が勃発したときには、ロシアの一方的な侵攻にたいしてあれほどヒステリカルに非難の嵐をひきおこして大騒ぎしたのに。


 とにかく3度目の和平交渉はありません。もう二度とイランはだまされないはずです。


 たとえ米国から停戦を要求されても「No!」と首を横にふりつづけるでしょう。


 そのせいでホルムズ海峡は閉じたままになり、株式市場は暴落し、AIバブルは弾け、巨大なデータセンターの建設には歯止めがかかり、世界経済全体が恐ろしい速度で崖っぷちへ押されていくかもしれません。


 それ以上にわたしたちの日常生活を締め上げてくるのはエネルギー危機です。


 1973年のオイルショックがほんの「かすり傷」でしかなかったかのような骨の髄までうずくような本格的な「痛み」をわたしたち全員が味わうことになるのではないでしょうか。



【湾岸諸国】

 低コストで高い収益をあげ、そこから生まれた利益を投資家や株主へ手渡すというアメリカ型資本主義はウルトラ資本主義(super capitalism)と呼ばれています。


 このシステムによって、過去半世紀のあいだに1%の超富裕層と99%の庶民という社会がかたちづくられはじめたのですけれど、この経済システムに対して徹底抗戦を挑んでいるのがイランではないかとわたしは考えています。


 なぜならサウジアラビア・カタール・アラブ首長国連邦・バーレーン・クエート・オマーンなど米国の軍事基地に守られながら億万長者たちのプレイグラウンド(遊び場所)として巨額のドル資産を行き来させてきた国々を、イランは「腐敗した国家」「腐敗したイスラム教徒」と呼びならわしていたからです。


 たとえば、これはじっさいにバーレーンに長く暮らしていた元CIAの方のインタビューで知ったのですが、サウジアラビアの王族たちは欧州で10代の高級娼婦を買いにでかけるときに、白い長袖の「トーブ」と呼ばれる民族衣装を脱ぎ、頭に巻いていた「シュマーグ」とよばれる布をほどき、ヨーロッパの空港で自家用機を降りたったときには短パンやタンクトップで遊びまわるのだそうです。そしてサウジアラビアにもどってくるときには、途中の空港でなんどか着陸して、そのたびに煌びやかな礼拝堂(モスク)に立ちよっては、一般人では想像もできない享楽におぼれた罪を払いのけながら自国の空港をめざすらしいのです。


 そんなサウジアラビアなどの王族たちにとってイランが「煙たい国」であり「目の上のコブ」なのはとうぜんかもしれません。


 そのため同じイスラム教徒であるのにもかかわらず、スンニ派の彼らは外交上はイランと笑顔で握手をしながらも、その同じ手でイスラエル・米国と握手を交わし、こっそりと「ホメニイを殺してくれ」とささやきつつイランの政権交代をもくろんできました。


 だからこそイランは、いままで西側諸国による経済制裁で受けたのと同じ「痛み」を石油産出国でもある湾岸諸国だけではなく、わたしたち西側諸国全体に味わわせるような戦略をとっているのではないかと考えられます。


 湾岸諸国にある米軍基地を破壊し、「THAAD」などの弾道弾迎撃ミサイル・システムと抱き合ったレーダー施設を壊滅して盲目状態にさせたあとは、ホルムズ海峡を閉じて世界のエネルギーの20%をまかなう「急所」をおさえました。


 そのすぐあとにはアマゾンのデータセンターなど戦争に使われているAIに必要な情報を提供している施設を破壊しています。


 いきあたりばったりの米国とはちがって、イランは25年にわたってこの日のくることを予想しながら計画を立てていたものとみられています。


 ですから彼らは着実に冷静にプラン通りに米国の軍事資産をひとつずつ消滅させているのでしょう。


 戦争においてはアクションにたいしてリアクションする側、つまり相手の行動にたいして反応する側は敗北する側だと言われています。


 いまのところイランはつぎからつぎへとシステマチックに米国の軍事施設を破壊してきましたので行動する側だといえます。


 米国は「こんなはずではなかった」とおどろいて興奮した口調で嘘八百をならべながら「反応」している側です。


 勝敗はあきらかなのです。


 たしか1年ほど前に公開したエッセイでも書きましたが、21世紀の戦場においてはアメリカ第7艦隊のように空母を筆頭にした艦隊は相手国を「脅迫」する目的と空爆のため以外には役に立たないそうです。


 たった1発の極超音速ミサイル(ハイパーソニック・ミサイル)が着弾しただけで、空母は損害を受けるだけではすまない。

 1発で沈没させられる可能性がある、と米国の軍事専門家は述べています。


 それ以上に、それだけの艦隊を維持するための軍需品の補給・兵員の輸送・衛生・糧食に使われる燃料費は日々莫大なものになっていきます。


 つまり戦術(タクティクス)よりも物流に重きをおく兵站(へいたん:ロジスティックス)がより大切になってくるのです。


「アマチュアは戦術に重きをおき、プロは兵站に注目する」とは歴史的な名言でしょう。


 このエネルギー危機がつづけば、「ピークオイル」説を地でいくような経済・政治・社会全体をのみこむ『システム・ショック』にみまわれるでしょう。


 わたしたちの日常生活も窒息しはじめます。


「イランは250年間、みずから他国を攻撃したことはない」とはよく言われることです。

 これにたいする疑問を投げかける大手メディアの記事は数多くありますが、苦しい反論にしかなっていません。


 なぜなら、じっさいにイランが先制攻撃をかけたことはないからです。


 時間がおありでしたら、AIによる概要をお読みになるだけではなく、ウィキペディアやその他の記事をお調べになってください。



【要求】

アメリカの要求(停戦の条件)は:

①イランが核開発計画を完全に解体し、すべてのウラン濃縮活動を停止すること。

②湾岸地域の代理勢力(ヒズボラ・フーシ・ハマスなど)への支援を中止すること。

③ドローンおよび中距離弾道ミサイルおよび極超音速ミサイルなどを放棄すること。


 つまり無条件降伏をせよ、と言っているのとかわりはないので、イランがそのような要求にひとつでも応えるはずはありません。


 無防備になったとたんに攻撃してきて政権交代を強いることは目に見えているからです。


 まず、問わなければいけないことは、イランはいままでアメリカ国家やアメリカの国民にたいしてなにか悪いことでもしたのでしょうか?

 イランはアメリカ本国にたいしてなんらかの脅威をあたえたことがあったでしょうか?

 イランはアメリカ本国にたいしてなんらかの危険性をもたらしたことがあったでしょうか?


 イスラエルに言わせると、イランという隣人はかならずいつか核兵器をもつようになり、かならずいつかイスラエルを攻撃するにちがいない、また、われわれが行なっているパレスチナ人の虐殺と民族浄化を快く思っておらず、ハマスやヒズボラやフーシなどを使って邪魔をしてくる『悪の国家』だ、ということらしいのです。


 犯罪に手を染めてもいない人にたいして、あの人はそのうちかならず罪を犯すだろうからいまのうち手を打ったほうが良い、というのは妄想の領域でしかありません。


イランの要求(停戦の条件)は:

①イスラエルと米国は今後永久にイランを攻撃しないという保証をすること。

②そのためには中東地域にある米軍の完全撤退と軍事資産(米軍基地やレーダーシステムなど)の完全撤廃をおこなうこと。

③イスラエルによる湾岸諸国にたいする植民地化と軍事化をやめること。


 つまりイランはアメリカにたいして「中東から出ていきなさい」と要求し、イスラエルのシオニスト政権の消滅を望んでいるのです。


 イスラエルさえ無くなれば中東に真の平和がおとずれる、という立ち位置です。


 双方ともに妥協点が見つかるはずはないのです。



【背景】

 国際法にのっとって戦時マナーを守りつづけ、大国からの攻撃にひたすら耐えながら「わたしたちは独立国なのだからわたしたちの国政には口をはさまないでもらいたい、女性問題も外から表層だけを見て判断しても家庭内における男女のほんとうの力関係はわからない。歴史と文化がちがうのだから」と主張してきたイラン。


「どうか主権国家としてのイランを尊重して、7,500項目にもおよぶ経済制裁を解き、世界の国々との貿易を再開できるようにしてもらいたい。われわれが望んでいるのは米国や日本や中国やロシアやインドとのビジネスであり、国家の安定と安全と自由な経済活動を手にしたいだけなのだ」


 そう言いつづけてきたのがイランだということは米国の国際政治学者さんたちの論文を読めば一目瞭然です。


 ただしイランは同時にイスラエルにたいしては厳しい姿勢をつづけてきました。


 パレスチナを国家として認めずパレスチナ人を虐殺することはゆるされないとして、ヒズボラ・フーシ・ハマスなどを使ってイスラエル政府に抵抗・反撃してきたのです。


 だからこそイスラエル政府はイランを目の敵にしているのです。


 イランがそこに在るかぎり「大イスラエルの夢」の実現とガザ市とヨルダン川西岸の占領は不可能です。


 しかもイランは「イスラム教の解釈によると「核兵器」は悪魔の兵器なのでぜったいに手にすることはありえない」と国際原子力機関(IAEA)の監査をなんども受けいれてきた国でもあります。


 2025年の初頭には米国の国家情報長官トゥルシー・ギャバード自身がイランには核兵器は存在しないという調査結果を公聴会で発表してもいます。


 とはいっても、イランの強硬派は「自分たちが核兵器をもたないかぎり、これから先も米国・イスラエルは彼らに利益をもたらす政権を樹立(レジーム・チェンジ)させようともくろむだろうし、これから先もかならず攻撃をしかけてくるだろう。だが核兵器さえ持てば北鮮とおなじように米国はちょっかいを出さないはずだ」と反論しつづけてきました。


 それにたいして「いや核兵器は悪魔の武器である。イスラム教とは相容れないものだ」と強硬派をおさえこんできたのがアーヤトーラ・ハメニイ師だったのです。


 その人を殺害してしまったわけです。


 敵国の首さえ切り落としてしまえば国民は寝返って自国の政府を倒すだろう、という歴史的にいちども成功したことのない手法をいまだにくりかえしている米国とイスラエル。


 敵国の軍事資産を破壊できない場合にはかならず一般市民を虐殺しはじめる米国とイスラエル。

 現在もテヘランの病院や学校を空爆しつづけています。


 シーア派だけではなくスンニ派にとっても心のよりどころであるローマ司教にも似た最高指導者を殺害したらどうなるか?


 世界中のイスラム教徒の怒りを買うことになったのです。


 自分の国の堅苦しさと古さに嫌気がさしていたイランの若者たちまでもが、いっせいに母国のために立ちあがり、米国のB-1やB-2爆撃機からの爆弾がふりそそいでくるのをものともせずにテヘランの街路をねり歩き、うめつくし、爆発音がひびくなかで、おびえることもなく集会をひらいているのです。


 そういう国民をついにホンキで怒らせてしまったわけです。


 こんなにあたりまえな人間心理の仕組みすら見えなかったのでしょうか?


 もっとも恐ろしい怒りは悪人の怒りではなく、静かな善人の怒りであり、それは神の怒りにも等しい、とはよく言われることですけれど、はたから見ていて、わたしたち西側諸国の無知と凡庸さはそこまでイランを追いこんだのだとおもいます。



【戦況】

 もしも戦争がはじまったら、それはイランという国の「存亡の危機」になるだろう故ハメニイ師は述べていました。


 ですから「イランの勝利は戦争に勝つことではなく、ただ「生き残る」ことなのだ。それだけですでにイランは勝利したことと同じになる」というのが米国の戦略地政学者さんたちの見方でした。


 アケメネス朝ペルシャ帝国の樹立から2,500年以上にわたってさまざまな王朝の変遷をくぐりぬけてきた国イラン。

 紀元前5,000年前に存在した『エラム文明』までさかのぼると、ほとんど8,000年に近い歴史をもっている国です。しかもエラム文明は高度な古代文明メソポタミアの影響を強く受けています。

 そのプライドがイランのひとびとの心の奥には宿っていると考えられます。


 そんなイランも、今回は世界最大の軍事資産を誇る米国の空爆によって、ガザ市のパレスチナ人がそうされたように、たくさんのひとびとが殺され、多くの建物が破壊され『月面化』されています。


 けれども主権国家(sovereign state)として生き残るために戦いつづけ、たとえアメリカがニセの勝利宣言もしくは戦争終結宣言を発令して、この泥沼状態から逃げ出そうとしても、中東に残っている米軍の軍事資産とイスラエルにたいする攻撃はやめないでしょうし、ホルムズ海峡の閉鎖とアメリカの同盟国にたいするタンカー攻撃の手をゆるめることもないとおもわれます。


 つまり戦争はつづくのです。


 そしてイスラエルという国のネタニヤフ首相という方の40年間におよぶ「大イスラエルの夢」を実現するという個人的名誉と保身と虚栄のために、米国のユダヤマネー(AIPAC)から流れてくる政治献金という名のワイロ漬けになった大統領や議員たちが、この第5次中東戦争に加担し、そのせいで世界全体の経済が危機的状況におちいり、いま手の打ちようがないほどの戦争拡大にみまわれているわけです。


 世界は理不尽です。戦争はそれ以上に理不尽なものであり、偶然の積みかさねが、想像を絶する悲劇を生み出す可能性をはらんでいます。


 だからこそ、ほんとうの大人でしたら、高速道路に乗る前に、ちゃんと「出口」(off-ramp)を把握していなければならなかったはずです。


 戦いをはじめる前に終わり方が見えていなければいけなかったのです。


 トランプ大統領の傲慢さ(アロガンス:arrogance)と無知(イグノランス:ignorance)のせいだとおっしゃる地政学者さんもいらっしゃいます。


 とにかく、いまのところ停戦への出口(オフランプ)はどこにも見つかりません。


 トランプ大統領がいくら口先だけで「イラン戦争は終結した」と言ったところでイランは攻撃をやめませんしホルムズ海峡が開かれることもありません。


 地上戦についてイランの大使は静かな口調で「お待ちしています。いつでもどうぞ」とインタビューで答えました。


 もちろんイランの革命防衛隊の方たちの血は多く流されるでしょう。

 おなじように米国の海兵隊の方たちも亡くなるでしょう。

 そのうち撤兵させることが困難になるような状況が生まれ、彼らの救助任務をさずかった方たちにさらなる血を流させることにもなるかもしれません。


『ブラックホーク・ダウン』という映画で描かれていたような緊急事態が地上戦ではいたるところで発生するだろうと心ある戦略アドバイザーの方たちは述べています。


 だからこそアメリカ軍上層部の方たちはトランプ大統領やヘグゼス戦争長官の命令にたいして「それは無理。馬鹿げた危険な計画だ」と首を横にふるだろうし、そうしなければならない。

 そう考えている元大統領の顧問だったような方たちが何人かおられます。


 相手国の元首たちを地下にもぐって逃げ隠れしている「ネズミ」と呼びならわすヘグゼス戦争長官。

 その発表後、イランの大統領は爆撃音のひびく街路を国民たちといっしょに練り歩き、笑顔で肩をたたきあい抱き合いながらひとびとに応えていました。

 その動画がアップロードされています。

 さらに壇上で語っているヘグゼス戦争長官とテヘランの街路を歩いているイランの大統領の画像とをひとつにまとめたYouTube動画までもが拡散されています。


 戦時中だからこそ敵国の元首や国民にたいして敬意を払うようにしなければならない、なぜなら相手をあなどった側はかならず敗北するからだ、というのは孫子の『兵法』にも述べられている原則です。


 敵を過小評価してはいけません。何が起こるかわからないからです。


 アメリカの国民の82%が「望んでいない」というこの戦争にかりだされた若い兵士たちの多くが亡くなるでしょう。

 そのとき、いくら米国が同盟国に泣きついても、イランはこのアメリカ型資本主義にたいする破壊プランを途中で放棄することはないでしょう。


 軍事・経済・エネルギー・そして社会全体をまきこむ『システム・ショック』はつづきます。


 さまざまな国々で『経済破綻』(エコノミック・メルトダウン)が起こるとされています。


 ロシアはこの戦争のおかげで石油が売れまくり、5年にわたるウクライナ戦争で失った資産以上の利益を手にすることになるでしょう。


 インド・韓国・日本は80%に近い石油を湾岸諸国からの輸入にたよっています。


 ロシアや中国との国交の正常化を図らなければ、かつてないほどのエネルギー危機におちいるとされています。


 アメリカの武器は底をついています。

 NATOに売ることのできる数も限られています。

 そのために、英国・フランス・ドイツが購入した武器がウクライナへ供与されることもなくなり、ロシアの兵士が殺される確率も減っていくので、おそらくプーチン大統領は心のなかでほくそ笑んでいるかもしれません。


 国家情報長官トゥルシー・ギャバードさんはこの戦争がはじまる前に膨大な調査結果をまとめて「わたしたちはこの戦争に負けるでしょう。すべきではありません」(We will lose this war. Don't do it.)と大統領と彼の側近たちに進言しました。

 そして無視されました。


 出口はないのです。

 No Way Out。

 八方ふさがり。どんづまり。にっちもさっちもいかない。

 これが現在のわたしたちがおかれた状況です。





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